「で、結局私の術式はなんなんですか?」
そういえば聞いてないな、と気づき真人に質問する。ワクワクしながら答えを待っているととんでもない返事が返ってきた。
「知らない」
「……はい?」
頭の中がハテナマークで埋め尽くされた。
もしやこれが噂に聞くセルフ無領空処ってやつ????
「まず知ってるなんて俺一言もいってないし。君が勝手に墓穴掘ったんだろ」
「え、でも真人の術式でわかるんじゃ…?」
え、あれ私の記憶違い?おっかしいな…でも本編で順平に式神の扱い方をレクチャーしてたよね?どゆこと?
私が首を傾げながら唸っていると、突然ギシッと何かが軋む音がした。音がした方を見ると真人が私のベッドでくつろぎ始めていた。
「ちょ、おい土足!せめて靴脱いで!汚れてたらクリーニング代請求しますからね!」
「その時は夏油からお金貰うといいよ」
「じゃあそうしますね」
ATMだったのかあのメロンパン。できれば極力話したくないし関わりたくないけど、寝具は大事だしなぁ…
「…というか!!私の術式の話ですけど」
「えぇー、まだその話する?まぁ良いけど……。
術式は魂を見ればなんとなく分かるんだけど…君の魂が変なせいかな。なーんか分かんないんだよね。君、何者?」
「何者と言われましても、ただの一般人ですが…?」
「いやだってキミの魂ヘンだもん」
「ヘンって……」
ディスられているのか褒められているのか……まぁ多分ディスられてるんだろうな。
「ま、術式は引き出せたはずだしそのうち分かると思うよ」
「使えねぇ…」
「殺されたい?」
「ど、どんな術式なんだろうなー!楽しみだなー!術式を引き出せるなんて真人さんってすごいなー!ありがたいなー!」
そしてその術式でいつかお前を倒して順平を救ってやる。
「ビックリするほど棒読みだったけど今回はそれで許してあげるよ」
「わーい」
私が適当に返事を返すと、真人がやっと私のベットから降りる。
「じゃ、そろそろ行こうかな。また来るね」
「来なくていいですよ」
「またね!」
バタン!と、勢いよくドアが閉められた。
のと同時に、
「やっと…嵐が去った…」
体の力が一気に抜けてその場にへたりこむ。そして、自然と涙が零れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バタン
穏やかな生得領域に扉の開閉音が響く。
「おかえり、真人。どうだった?アレは」
「想像以上にバカだったよ。ま、扱いやすくて助かるけどさ。」
転りんねの家から帰ってきた真人は、定位置のサマーベッドに腰掛ける。
「あ、そういえば聞いてよ夏油!アイツ、前から俺のこと知ってたみたいなんだよね」
「真人のことを?」
「そうそう。驚かしてみたら突然名前叫ばれてビックリしたよ〜」
「へぇ…」と呟いた夏油は少し考えるような素振りを見せた後、何やら楽しそうにくつくつと笑う。
「…尚更興味が湧いてきたな。真人、その子の家の場所教えてくれない?」
「えぇー?なんでさ。飽きるまで貸してやんないって言ったろ」
「そこを頼むよ。悪いようにはしないからさ。
理由はまぁ色々あるけど…強いていうなら好奇心、かな」