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「スマホ返せ」
「んー?やだ」

生まれたばっかりの真人くんはヤダヤダ期に入ったみたいですね〜!!っていうか呪霊に電化製品って持たせたらなんかヤバそう……壊れたりしない?バックアップなんて取ってないしこれで壊れたらマジで泣くぞ?こうなったらそうだな……真人を幼児の様に接してみるというのはどうだろう。もうヤケクソだ。煽られたんなら煽り返してやる!!!!

「……真人くんどうしたのかな〜?よしよーし、いい子ですから私にスマホかえしましょうねー!!」
私は背伸びをして真人の前髪を撫でながら子供をあやすような感じで真人に話しかける。さて真人の反応は……?

「……………………は?」

真人はまるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
目を丸くさせたまま固まった真人はだんだん顔を歪めていく。私は「あれ、もしかして私なんかやっちゃいました?」とまるで異世界転生してチート能力ゲットしたやつみたいなことを思ったのもつかの間。プハッ、と突然吹き出した音が聞こえた。

「……ッククク、アッハハハハ!!!!何それ、すっごい気持ち悪いね。思い出しただけでも笑えるし吐き気がするんだけど!」

突然大声で笑いだした真人に唖然とする。と、同時に笑われたことにすごく腹が立ってきた。せっかく昼に好きな物食べてストレス解消できたのに……!!ホントにコイツはすべてを台無しにしやがるな……!よしその喧嘩、いい値で買って倍にして返してやるよ!!

「吐き気がするなら私が腹パンして楽にしてあげましょうか?」
「……うん?」
「生まれたばっかりの真人くんは1人で上手に吐けないでしょうし私が手伝ってあげますよ!ついでに胃の中にある改造人間も体に悪いでしょうし全部ないないしちゃいましょうね!!」

私はわざと相手が苛立ちそうな言い方をして自分よりも数十センチ高い相手に言葉を放つ。

「へぇ?お前も言うようになったね。できるもんならやってみろよ。ま、無理だろうけど」
「余裕ぶってるのも今のうちですよ!!痛い目見ても知らねぇからな!!」

私は目の前の真人の鳩尾めがけ拳を振るう。
目いっぱいの殺意を込めて。

この時の私は完全に真人の挑発に乗ってしまっていて、あのことをすっかり忘れていた。
例え呪力を、術式を扱えていたとしても魂の存在を知覚していなければ真人にダメージを与えることが出来ないということに。

真人も当然そう思っていた。

刹那、転りんねの拳に呪力が纏った。