転
諸行無常 とは
仏教用語のひとつ。
この世の万物は常に変化または消滅し、一瞬と言えども存在は同一性を保持することはできないことをいう。
転生者 転りんね
彼女はここ数日の出来事により負の感情は積もりに積もっていた。
負の感情。それは呪力の大元。
転生者。それは他の人間とは似て非なるもの。
偶然か必然か。はたまた運命か。
幸か不幸か『それ』は起きた。
転の拳が真人に当たる瞬間。バチ、と音が聞こえたような気がした。
「は?」
その声を出したのがどちらだったのかも分からない。
【転生】
ーーーー
「は?」
突然拳に纏われた呪力に気づき避けようとした真人だったが、ギリギリ間に合わず腕に当たる。
「ッ!?」
「当たった……!」
その喜びもつかの間。
「お返しだよ」
突然後ろから聞こえた真人の声に驚き反射的に後ろを向こうとしようとするも真人に首を掴まれて動けない。
ドン、と背中から鈍い音が聞こえた。
「カハッ」
いつの間にか背後を取られ殴られてしまった。しかし真人なりの優しさか、あるいは舐められてるのか幸い血は流れていないようだった。痛いのには変わりないけど。
「ゲホッゲホッケホッ…いっ…てぇ…」
「ハハッ、苦しい?でも先にやってきたのはそっちだし、自業自得だよね」
痛みと苦しさで倒れ込んだ私を哀れむように真人は私を見下ろす。
「くっそ…………」
「っていうかこれ、お前の術式?」
「え?」
「術式」というワードにつられた私は真人の方に目を向けると、なんと真人の片腕が変形していた。
この色、このかたち…もしかしてさっき食べたポテト?
「真人が変形させたんじゃないの?」
「してないから聞いてるんだよ。ま、元に戻そうと思えば簡単に戻せるけど」
ほら、という声と共に真人の腕は瞬きをする間に元に戻っていた。
「さっきのが私の術式……?何でもpotatoに変形させちゃう術式……?ポテト食べ放題ってこと……?」
「いや、術式を初めて使ったから記憶に引っ張られただけじゃない?ほら、さっきポテト食べてたでしょ」
真人に冷静にツッコミを入れられた。なんかムカつく。けどよくよく考えてみれば元々呪霊の腕だったポテトってなんか不味そうだし食べたくないな……。
「それよりも聞きたいことがあるんけどさ」
「え、なんですか」
「まぁ君に聞いても意味無いと思うけど」
「サラッとディスってくるのやめてもらえます?」
「なんで俺の魂触れられたの?」
「……あ、確かに」
そういえば呪力とか術式を扱えてても魂を知覚して攻撃しないと真人にはダメージ入らないんだった。じゃあなんで私は真人の腕をポテトにできたんだ?
「うーん…」
「やっぱり分かんないかぁ。ま、元々期待してなかったからいいけどさ」
私が魂を知覚できた理由……?
「……転生特典?」
「なにそれ」
「え゛っ、あ、いや…何でもない…です…」
「ふーん?」
うっかり声に出てた!!!!まぁでもこれは別に大丈夫……だよね?あっちも特に気にしてる様子もないし。多分。
「あれ、そういえば私のスマホは……?」
「スマホ…あーさっきのやつね」
あそこにあるよ、と真人が指差す方を見てみると地面に画面がひび割れているスマホが落ちていた。
「ちょちょちょ!?え、壊れてないよねこれ!?」
急いでスマホを拾い上げスマホの電源ボタンを押すと、見慣れたホーム画面が表示された。
え?動くよね?壊れてないよね!?
画面をスワイプしてみるとスマホは正常に動作した。でも液晶にヒビ入ってるしこれは弁償案件ですね。
「おい真人!スマホ弁償しろ……あれ、いない?くっそ逃げられた!!!!」
薄暗い通りに私の怒号だけが響いた。