「おさけおいしぃ〜!」
目の前の人間は飲み始めて1時間と経たないうちに酩酊した。初めは恐る恐る飲んでいたが、次第に気分が良くなっていったようでどんどん酒を飲み進めていく。
「あれ、もうない……」
缶のひっくり返し、天井を向きながら酒を飲もうとするも、中身が既に無くなったようだ。
「はぁ〜」と、ため息をついた後、机に空になった缶を置き畳に寝転がる。
「ねぇまひと、あたらしいおさけかってきてよ」
「自分で買ってくれば?」
「やだ、うごきたくなーい」
「はは、めっちゃ酔ってるじゃん。……うーん、だいぶ酔ったみたいだし、もういいかな」
りんねに近寄るために立ち上がるが、相手は警戒心がいつもより薄れているようで、気づいていない。バカだなぁと思いつつゆっくりと魂に触れる。
「…ひっ!?え、なになに、なにしてんの!?」
「あれ、酔い覚めちゃった?まぁ今覚めても意味ないんだけど」
「や、やだ!はなれろ!死にたくない!」
「まぁ別に殺してもやってもいいんだけど、今日の目的はコッチなんだよね」
いつにも増してうるさいソイツを尻目に魂の中身を探る。前に見たときりんねの魂は術式が入っている魂と、呪力が通っていない魂のふたつに分かれていた。妙なのは魂がふたつあることと、呪力が通っていない魂があること。後者は所謂『天与呪縛』というヤツだろうか。しかし、それにしてはコイツに特出した部分は今のところ見受けられない。まぁ、馬鹿だから能力を扱えてないという線もあるかもしれないけど。
「ふっ、う”ぅ……きもちわるい」
「あれ?おかしくない?2つだったよね。前見たときは」
「なんのはなしだよ……」
「キミの魂の話だよ。輪郭はまだ歪だけど1つになってる」
「なにそれ…意味わかんないこと言わないでよ。ていうか魂がふたつってなに…?」
「……君ってさぁ」
いや、言わないでおこう。本人に自覚は無いようだし。言ったら面白そうだけど、それは今じゃない。
「…?なんですか?モヤモヤするので続き教えてくださいよ」
「キミって人の話聞かないタイプだよね」
「こ、コイツ…!!クソ、聞かなきゃ良かった!!ちょっとでも期待した私が馬鹿だった!!」