7-3

「君、関係者?」
「い、いや多分違いますね……」
「チッ……一般人守りながらとかめんどいわ」

はぁ、と本人の前で堂々とため息をつく。
私ももうちょっと良識のある術師に守ってもらいたかったなぁ!?しかもなんでよりにもよって直哉くんなの!?ここ関東だよね!?

「はぁ、死にたくないんやったらさっさとここから離れ──!」

突然言葉が途切れたと思うと直哉くんの背後に呪霊が現れ、殴りかかってくる。彼はそれをギリギリ躱し、呪霊の腕を蹴り飛ばす。

「チッ、無駄に硬いなぁ」

一旦距離を取り、両者相手の出方を窺い身構える。
先手を取ったのは呪霊。相手に飛びかかっていく。それに対応して直哉くんも相手の攻撃をうまくかわし、すかさずカウンターを入れる。一見直哉くんの方が優勢のように見えるが足がどこか覚束無い様子だ。時々バランスも崩れそうになったりしている。もしかしなくても呪霊の術式が関係してるのか?
……っていやいや!じっくり戦闘を観察してる場合じゃない!!今のうちにここから離れないと。今のところ呪霊は私のことに気づいてないっぽいし、できるだけ音を立てないように下っていこう!
1歩、また1歩と階段を後ろ向きで下っていく。しかしここで突然ガクン、と浮遊感に襲われる。
まずい、踏み外した。

「やばっ」

タン。という軽くも重くも取れる音が響く。
痛みはない。なんとか階段から落ちずに済んだらしい、が思いっきり呪霊の無数の目と目があってしまった。
階段から落ちるより痛い目にあいそうだなぁ〜……なんて。ハハハ……。いやいや、そんな呑気なこと考えてる場合じゃねぇ!!早く逃げ

「あ……」

前を見るといつの間にか目の前まで迫ってきていた呪霊。
振り翳される拳。

恐ろしさに私は思わず目を瞑る。
その現実を受け入れたくなかったから。

また死んでしまえばこの酷い悪夢から、この世界から逃げ出せるのではないかという淡い期待も込めて。

そして、風を切る音が聞こえた。